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自分の寝床から村の中心へ歩いていけば、満開に近い桜の木。
村人も花見の準備をしているのか酒の匂いがまとわりつく。

子供らは落ちている桜の花びらを集めて「綺麗だね」と騒ぐ。
それを目尻に桜を仰ぎ見れば、薄桃色の着物が美しい重ね着でこぼれ落ちていた。


季節は、春。
色々な草木が冬の寒さを乗り越え芽吹く。
村の中心にあるかなり古い桜も花が咲き始めた。


冬の間、見ることが出来なかった村の風景に懐かしさを覚えるのはきっと私が老木の桜であるからだろう。咲いては散ることを繰り返して村を見てきた私。
そんな流れに人は美しさを見いだす。


「やぁ、姉さん。今年もきれいに咲きましたね」


声のした方を見れば、私の桜色の着物からちらちらと淡い紺の着物が見え隠れする。寄りかかっていた幹から(と言っても私の本体なのだが)体を起こすと、若い男が私を見上げていた。


「息災か、弟よ。」


姉弟といっても本当の家族ではない、ただ、この村にやってきた時期が同じなだけだ。私が村のご神木「桜」として、若い男は祭られる神「狐」として。
しかし、祭ってから幾年月、廃れた神は今や物の怪。神としての力もない。


「えぇ、元気ですよ。物の怪なので、病にはかかりませんしね。姉さんこそ今年は遅かったみたいで桜色の着物、きれないんじゃないかと思ってました。」


しかし、弟はどうやら物の怪であることに対してあまり嫌悪感がないようで。
あっけらかんとしている。


「ふふ、今年は冬が長引いたからの。桜色の着物はこの季節しか着ることができぬ、間におおてよかったわ。」


それどころか、物の怪でありながら村にやってくる同胞を追い返しているのだ、余所からは「変わり者の狐」と呼ばれて嫌われ者であるらしい。
一度、何故自分と同じモノを追い返すのか聞いてみたことがあるが、狐は曖昧に答えただけであった。


私には分かるぞ、弟よ。お前が同じモノ達に嫌われてでもこの村の守り神紛いをやっている理由が。


花よりも容易く散り逝く人がお前は愛しいのだろう
(人を愛した物の怪の末路などしれておろうに)


第一説 狐と桜(儚い姉弟)


あとがき(狐と桜さんは家族!なお話が書きたかったのですが・・・ちょっと予定と違う)
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