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春の昼下がり、隣の席の沖田智哉は欠伸を噛み殺しながらもデスクワークに励んでいる。真面目なヤツだ。
一方、俺、一ノ瀬周は昨日の出来事を沖田に相談するべきかどうか悩んでいた。ああ、左頬がジンジン痛む。
うん、相談しよう・・・。

「なあ、沖田」
流石に勤務中なので小声で話しかける。
沖田は明日の会議で使う資料を作成中(上司に押し付けられた)らしく、チラッと俺を見ると返事を返してくれた。
「何だよ、暇人」
別に俺は暇な訳じゃないけど、沖田から見れば暇人らしい。
「いやぁ、折り入って相談があるんだけど」
ヘラッと笑って言うと、沖田の眉間にしわが寄る。ぷぷっ、鬼みたいな顔になってるぜ。
「悪ィが俺は忙しいんだ。相談乗ってる暇なんてねーよ」
沖田を見れば分かるけど、ついつい邪魔したくなるんだよなぁ・・・なんて言ったらものすごい形相で睨まれそうだ(ってか、既に睨まれている)。
「えーッ!いいだろ?俺とお前の仲じゃねーか」
沖田の肩をガシッと掴むと、すぐに振り払われた。
「どんな仲だよ。ただの同僚だろうが、女たらし!」
「俺が女たらしって知ってるのはお前ぐらいだよ~」
俺はガキみたいな口調で言う。
沖田は単純なヤツだからまんまと俺の口車に乗るだろう。
「ああ、もう!しつけェーな!!」
「(そーら乗った)」
沖田は一段と強くキーボードを叩くと、俺の襟を掴んで休憩に入る。なんだかんだ言って沖田は良い奴なんだよな、単純で。

「で?」
沖田はポケットから煙草を取り出すと火をつける。そして、ふーっと一息つくと俺の方をじっと見てきた。俺もコーヒーを入れるとカップを見ながら話し始める。
「んー、実は昨日まゆみちゃんとデートして「お前、和桐と付き合ってたんじゃねーのかよ」」
突っ込み早ッ!!
俺は思わず沖田の方を見た。そうだ、沖田の彼女はあの子と幼馴染だった。どうりで詳しいはずだ。
「えーっと、・・・菜穂ちゃんとも付き合ってるよ?」
ああ、沖田の顔に「この女たらしが!」って書いてあるよ;
「で、話戻すけど。俺さ、まゆみちゃんに『花が綺麗だって思ってたけど、君がきれいな事に比べたら花なんか屑だ』って言ったら頬ぶたれたんだけど、なんでだと思う?

俺は真剣に聞いたのに、沖田は無視しやがった。


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