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空が赤い。
夕方,青を飲み込んで赤に染まるとき。
ヒトは家へと帰っていく,まるで,夜というものから逃げるように。

蹲って泣きじゃくる子供に母親らしきヒトが近づくと子は泣き顔を母親に甘えるように着物へすがりつく。

―えーん
「あらあら,坊や。どうしたの?ああ,転んだのね。よしよし。」

―うぅ・・・。
「さ,もう帰りましょうね。もう暗くなるわ。」
手を引かれ,泣いていたことが嘘のように子は満面の笑みを浮かべている


それを遠くから見ている僕には,あの優しい手が伸ばされることはない。
でも,羨ましいとも思っていはいない。


村から外れた道を少し,山道に沿うようにして歩いていけば,雑草の生い茂った道が見える。村人は入ったことがない道だ。
その先には狐が祭られていた社がある。もう古びていて不気味である。

「ふぁ。」

そこには狐がすんでいるのは誰も知らないことである。

「さて,今日も村にいってみようか」

のっぺりと起き上がると白い着物が,ずるりと足元に落ちた。
狐は一日のほとんどを村の中ですごす。もちろん,ヒトには見えていないが。

雑草の道を抜けて村の中心に行けば,大きな桜の『姉さん』。
その木に登って,桜の周りにあつまる子供らを見ている。
ことあるごとに『きゃらきゃら』と笑ったり,大声で泣いたりとする子を見るのは俺にとって面白い。
子供というものはよく「怪」に狙われやすい,それ故,子供を遊ばせるのは,神社か寺の境内。若しくは清浄な場所で遊ばせるのがよい。
ここは俺と桜のおかげで安全だ。

漸く,子供が集まってきた。
走り回ったり,木に登ったり,木の枝で地面に絵を描いたりしている。

「ふふ,可愛いのう。狐,見ろあの淡い紺の着物の子を可笑しいことよ。」

姉さんも楽しそうに見ている。
今はもう桜色の着物ではなく,青い重ね着だ。
ぼんやりと子供らの様子をみていると,子供に交わらず,じっとこっちを見ている少年がいた。

ああ,あの子供・・・・・・・・・・。

狐の口の端がつぅとあがった。
傍目でみれば物の怪そのものの様な笑みで。

            


             赤い眼がすぃと細く鋭く,獲物を捕らえた
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